「受容感プロファイリング(GAP)」との出会いとその後について

山口県田布施町教育長 尾﨑龍彦

平成27年4月の県市町教育長・教育委員研修会において、金子郁容先生(当時、慶応義塾大学大学院教授)から、コミュニティ・スクールについての話をお聞きした際にGAPという言葉を初めて耳にしました。当時、子供の自殺が社会問題化し、本町においても不登校問題は喫緊の課題であったことから、GAPについて詳しく知りたいなあと思っていたところ、情報交流会で金子先生にお尋ねする機会を得ました。
その席で、中山恭司先生(当時、慶應義塾大学SFC研究所上席所員)を紹介いただいたことがGAPとの出会いになり、早速、9月には中学校でGAP質問紙調査を実施して指導に生かす段階まで進みました。翌年度は小学校(6年生)にも導入し、学力向上とともに小中一貫での取組の1つとなっています。GAP導入に際しては、中山先生に何度も足を運んで指導して頂き、質問紙や集計方法、調査結果の表記等、学校からの改善要望等も真摯に受け止めてくださいました。
また、慶応義塾大学SFC研究所の先生方にも多大なお力添えを賜り、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。
 

次に、GAP導入後の状況について、特に不登校生徒の割合の変化について紹介します。
平成27年度末の中学校の不登校生徒の割合は、全国平均2.83人に対して、本町の1年生4.76人、2年生4.14人、3年生も同様な数値でした。ここ数年、高い割合で推移しているため、不登校対策は喫緊の課題となっていました。各種対応に努めるものの、大きな改善は見られませんでした。
ところが、GAP導入後、不登校の割合に変化が表れ始めました。平成28年度末の中学校の不登校生徒の割合は、全国平均3.14人に対して本町1年生0.69人、2年生は改善が見られなかったものの、平成29年度は30年1月末現在で1年生0.82人、2年生2.12人と不登校の出現が押さえられるようになってきました。不登校生徒の割合が減少傾向に転じてきた原因はいくつか考えられますが、GAPによるところも大きいと考えています。すでに、中山先生が分析されているように、GAPは調査結果が数値化されることで教員間で容易に情報が共有され、一人一人の教員が気づきや疑問を持ちながら児童生徒を見守ることで困り感などの変化を見逃さず、早期の対応をチームで行うことを可能にしたため、教員に対する児童生徒の信頼感が増しているものと考えられます。
また、児童生徒一人一人の心の状態を経年で追って変化を観察することで、小さな変化も見逃さずに対応することが可能になります。

最後に、GAP誕生に至るまでの中山先生のご労苦に感謝申し上げるとともに、「つなぐ未来研究所」のご発展と、関係の皆様のご健勝を祈念申し上げ、GAP導入に至る経緯と現状についての紹介とさせて頂きます。