コミュニティ・スクールを学校評価で支援する

コミュニティ・スクールが実施する学校評価を支援する活動を行っています。P D C Aのマネジメントサイクルの後半にあたる C(評価)と A(改善)の過程で、課題を発見し、その改善方法や成果目標を共有するためのアクションプランの作成、また地域住民を対象にしたアンケートの実施など、学校や教育委員会と協力し調査研究を行っています。

住民アンケートと学校関係者評価の視点

つぎの資料は、人口18万人の中堅クラスの都市で実施したコミュニティ・スクールに関する調査結果の一部です。このような調査によって、コミュニティ・スクールを推進していくための課題の発見やその解決方法の手がかりを得ることができますが、このような調査は、つぎの3点についても有効なツールになります。

1.学校の教育活動のふり返りのきっかけをつくる
2.学校が行う自己評価に住民の視点から検討を加えることができる
3.学校や教育委員会と住民との相互理解を深める

 


図1 生徒が地域の人たちに挨拶をする効果

「生徒が住民に挨拶ができているか」と「住民が学校の教育活動に協力・支援したいか」の回答結果を、つぎのようにクロスさせます。

図1から、中学生が地域の人たちに挨拶できていると回答している人たちの86%は、中学校の教育活動に協力・支援したいと考えていることが分かります。この結果からコミュニティ・スクールにとって地域との連携を強めていくために、生徒の地域帰属意識に重点を置いた指導計画の作成など、実現可能性を図りながら、何を優先するかなど、事実に基づいた具体的な検討が可能になります。


図2 住民の学校への協力・支援を引き出すための活動

「生徒と話したことがあるか」に「住民が学校に協力・支援したいか」と「ボランティア活動の経験」の回答結果をクロスさせることで、学校が住民とコミュニティの橋渡し役としての可能性が見えてきます。

図2から、ボランティア活動をしていない住民であっても、中学生と話をすることで、学校の教育活動への協力や支援を積極的に考えていることが示されています。住民の中には、子どもと関わる過程で自発的に協力しようと考える人が少なくないことが分かります。ボランティア活動の効果としてコミュニティ全体への影響を考えると、元気で活気のあるまちづくりに子どもの教員以外の大人との関係づくりが重要なことに気づかされます。


図3 コミュニティ・スクールについての住民の認知度

「コミュニティ・スクールであることを知っているか」と「学校行事や地域連携活動への参加状況」の回答結果をクロスさせることで、これまで見えなかったことが明らかになります。

図3から、学校の通学区域に住む人たちは、学校行事や学校と自治会などが連携する活動に参加している、参加していないを問わず、学校がコミュニティ・スクールに指定されていることを知らないと回答した割合が高いことが分かります。新しい課題の発見につながる調査結果になりました。

実際に、この調査を実施したコミュニティ・スクールでは、このような調査結果を生かしながら、反省やできない理由の説明に終わるのではなく、実態を反映したアクションプランの作成を模索する動きが生まれています。


図4 PDCAに「R(調査)」を導入した学校評価モデル

PDCAサイクルに、R(調査)を導入した学校評価モデルをつくり、地域住民を対象に調査を実施したコミュニティ・スクールがあります。

 

図4のように、住民アンケート(R:research)をPDCAサイクルに導入し、C(評価)からA(改善)の過程でコミュニティ・スクール事務局が熟議や教員研修会を実施することで、教職員以外の視点から地域とともにある学校としての課題や実態を把握しようと努めています。

コンサマトリー化したこれまでの学校評価からの転換

このコミュニティ・スクールの学校評価活動を支援する過程で、反省やできない理由の説明に終始し改善点が明確にならない段階から、学校の実態を反映する調査結果に基づきコミュニティ・スクールとしての課題を見つけようとするクールで積極的な姿勢が教職員が見られています。このような変化は、アクションプランの作成や地域への貢献を目指す活動づくりなど、これまでにはない成果を生み出しています。


図5 子どもたちの元気なあいさつが、コミュニティをかえる

「子どもと地域住民との心と身体の距離の近さ」と「地域住民による学校の教育活動への協力(学校支援活動)」との関係を探る手がかりが得られました。

図5は、17の自治会グループの組長・班長を対象に実施した調査結果の一部です。様々な理由があると思われますが、図中 で囲まれた自治会では、子でどもがよく挨拶をしてくれることから住民に学校の教育活動に対して協力しようとする積極的な態度が強く示されていることが分かります。このような調査結果から、私たちは学校を支援する住民の自発的な活動やネットワークがつくられていく、その過程を知る手がかりが得られると考えています。子どもたちの元気なあいさつやお手伝いは、学校を核にしたコミュニティづくりのはじめの一歩になると期待できます。このようにPDCAサイクルにR(調査)を加えることで、C(評価)の過程をより充実させアクションプランの作成に役立てたり、コミュニティの一員として望まれる子ども像を具体的に示すことができます。

子どもの笑顔や挨拶、小さなお手伝いを通して、親や教員以外のおとなとの関係づくりや様々なロールモデルとなるお兄さんお姉さんからお年寄りまで、子どもにとって思いがけない出会いも期待できます。私たちは、親でも教員でもなく、子どもの多世代のおとなとの世代間関係を「タテ」でも「ヨコ」でもない「ナナメの関係」と呼んでいます。

図中の自治会A( )と自治会B(  )では、子どもの学習支援や遊び場づくりを目的に自治会施設の開放がはじまりました。小・中学生の勉強や夏休みの宿題を高校生が手助けしたり、子どもやその親がお年寄りと交流したりする計画もあるようです。子どもが参加できる活動をつくることで、子どもの親や家族も一緒に参加し、多世代交流とナナメの関係づくりを目的とした中間的スペースがつくられはじめています。