学校でコミュニティ・ソリューションをつくる

地域学校計画・農村地域学校・川口プラン

アメリカのオルセン(Olsen E.G.)が提唱した地域社会学校や戦後神奈川県足柄上郡福沢村(現在の南足柄市)で石山脩平によって進められた農村地域学校、地域教育計画の実践として全市的に実践された川口プラン(埼玉県)など、カリキュラム論を中心とした開かれた学校モデルを評価しつつも、これらとは一線を画し、ソーシャル・イノベーション理論に基づくコミュニティ・スクールが異なるクラス* にあることを説明し、その実践事例を紹介します。

*Ikuyo Kaneko. 2013. Social Entrepreneurship in Japan: A Historical Perspective on Current Trends. Journal of Social Entrepreneurship.

私たちはコミュニティ・スクールがコミュニティをベースにしたソーシャルイノベーションのツールであることに立ち返り、「住みやすさ」や「子どものしあわせがひろがるまちづくり」に貢献する活動や実践事例を通して、コミュニティ・スクールがどのような学校づくりなのかを紹介します。イノベーション(innovation)には、もともと「新しい結合やつながり」という意味があります。

今後、各地で聞き取り調査を行ったり、ミーティングやワークショップを開催したり、コミュニティ・スクールについての理解を参加者と一緒に深めたいと考えています。

 

コミュニティ・スクールの制度パフォーマンスを測る

2018年、コミュニティ・スクールの数は前年より1832校増え、5432校になりました(平成30年4月1日現在)。神奈川県では、平成31年度までに、すべての高等学校に学校運営協議会を設置することが計画されています。そのような状況の中、多くのコミュニティ・スクールでは、「開かれた学校」として、学校支援ボランティアを活用するモデルが、分かりやすいコミュニティ・スクールの実践として進められています。コミュニティ・スクールの制度パフォーマンスの測定方法に関するレポートの一部を紹介することで、「地域とともにある学校」としてのコミュニティ・スクールの現状を理解し、課題の発見に役立てたいと考えています。

図1 コミュニティ・スクールの制度パフォーマンス測定のための指標

 

図1は、コミュニティ・スクールの制度パフォーマンスの測定方法を提案するために2011年に作成し、2018年に改良を加えた模式図になります。中央には、コミュニティ・スクールの制度パフォーマンスを測定するために設定された6つの指標が円環状に連なっています。

例えば、「カリキュラム再設計」は、学校教育法(平成19年改正)に規定されている学力の三要素に加え、作成時から改訂された2020年学習指導要領に示された子どもの自己肯定感と主体性にウェイトを置いた学習指導や活動、倉敷宣言(2016年)の背景や内容、OECDが公開している調査資料を参考に修正しました。具体的には、少し硬い表現ですが、社会の多元性の認識、和解的な問題解決の態度などの政治的リタラシー* などに着目しサブスケールを設定することで、コミュニティ・スクールのカリキュラムが知識・技能に偏ることなく、児童生徒に身に付けてほしい力や態度(「批判的に思考することができる」など)を含め、カリキュラムが作成されているか評価することができます。「学校ガバナンス」や「学校開放事業」など、他の5つの指標においても、学校施設の年間稼働率や学校運営協議会の法定権限の行使など、それぞれの指標は、同じように数値化され定量的に評価するためのサブスケールによって構成されています。また、図中の円環状に連なる6つの指標は、コミュニティ・スクールの制度パフォーマンスを測定する上で、印象や感情に左右されないよう信頼度を高めるために、広い範囲で検証が可能なこと、住民の判断や評価に照らし合わせていることなど、5つの規準を設定し、それらによってシビアにテストすることにしています** 。

図1の左サイドの「コミュニティ・ルーム」は、その設置と運営がどのような方法で行われているかによって、コミュニティ・スクールの制度パフォーマンスを端的に測定できる単一の指標として設定しました。また、右サイドの「ナナメの関係づくり」は、子どもを中心にコミュニティ内に世代間関係(ナナメの関係)が構築されることが、コミュニティレベルで、コミュニティ・スクールの制度パフォーマンスに差異が生じたとき、ソーシャルキャピタルの視点を加えながら、なぜそのような差異が生じたのかを検討する際の説明変数として設定しています。また、「コミュニティ・ルーム」の設置と運営方法、「ナナメの関係づくり」はともに、住民のストリートレベルでの判断や評価が得られるように分かりやすさを優先し、設けられた指標でもあります。

学校支援ボランティアの活用など、開かれた学校モデルによるコミュニティ・スクール論は、行政サイドや教育現場において、これまでの教育実践の流れからコミュニティ・スクールのイメージは持ちやすく、その構想も説明しやすい、分かりやすいなどの利点はあります。しかし、コミュニティ・スクールの期待される制度パフォーマンスの違いが、質量ともに生じることも懸念され、もったいないことだと考えてもいます。

2017年改正の社会教育法に基づき、その翌年スタートした地域学校協働活動の成果や課題を含め、2019年から2年間、先に引用したソーシャルイノベーション理論を参考に構築したモデルを手がかりに、よりシンプルなモデルの構築が可能か検討を加えながら調査を実施します。その結果は、随時公開する予定です。

   * クリック・レポート:Education for citizenship and the teaching of democracy in schools(1998)

** Robert David Putnam, Making Democracy Work: Civic Traditions in Modern Italy, (Princeton University Press, 1993), pp.64-65

 

コミュニティ・スクールが重視する学校の教育力

コミュニティ・スクールに期待される子どもたちへの指導は、どのような教育実践を通じて行われるのか、そこには児童生徒指導の積極的な側面として大切にしたい視点や考えがあります。

2010年に文部科学省から発行された「生徒指導提要(pp.222-225)」では、地域に住む一人ひとりがセーフティネットの役割を果たすことの重要性が示されています。また、子どもたちにもそのことを自覚し、認識することが求められています。児童生徒指導においては、地域コミュニティの一員としてその役割を果たせるように、社会参加や一歩進んだ社会参画へ実践を通じて導かれた子どもたちが、地域の人たちとのつながりをつくることの重要性がはっきりと書かれています。このような多世代交流に基づく体験活動と子どもの新しい関係づくりを目指した実践を前提に、生徒指導提要(p.225)では規範意識を含めた様々なリテラシーから成る社会的なリテラシーの育成を、児童生徒指導の最終ゴールとして設定しています。

このように社会の形成者をキーワードに、社会生活を送るうえで必要な規律を身に付けるなどの指導や不登校とその他の問題行動への指導対応に、つぎのような側面が積極的な児童生徒指導として加わります* 。

コミュニティをベースに子どもと大人の世代間関係(ナナメの関係)を生かした実践を通じて、社会的なリテラシーや市民性の形成を目指す児童生徒指導

宮澤康人(1992)は、かつてそれぞれの大人が子どものモデルであり、タテ、ヨコ、ナナメの人間関係が子どもを社会の一員として育てていく機能を担っていたことをふり返りながら、現代の私たちの社会では、子どもの教育を親と教員だけがその役割を担ったことによって、家庭と学校は子どもを一人前の大人にするということでは、むしろ非力な制度となったことを指摘しています。また、鈴木聡(2002)は、学校がヨコやナナメの多様な関係をつくる場であり、子どもは同じ世代とのヨコの関係、大人たちとのナナメの関係をつむぎだしながら、子どもたちがそれぞれのライフイメージを模索していくことに期待しました** 。

コミュニティ活動への子どもの参加や参画は、ナナメの人間関係をつくるような実践を通じて、様々な経験を持つ大人たちとかかわることで、教えられたり、気づいたり、感動したりしながら社会的なリテラシーや市民性を心とからだ全体でおぼえられることが期待できます。児童生徒指導において、コミュニティ・スクールは、家庭と学校が子どもを抱えこんだり、囲いこんだりせず、地域(コミュニティ)も一緒になって子どもを育てることを後押しする制度だと考えています。

   * 社会の形成者をキーワードに児童生徒指導の積極的な側面として、2006年改正の教育基本法と翌年改正の学校教育法に基づき、生徒指導提要ではこれまで以上に児童生徒指導の計画が地域コミュニティに開かれているかが問われていることが分かります。また、1981年に文部科学省から発行された「生徒指導の手引き」には、「児童生徒」ではなく「生徒」であり、学校内での生徒個人と生徒集団の関係を対比させていることから、生徒指導提要は学校の教育力が発揮される新たな方向を示した印象を持っています。

** 宮澤康人 「学校を糾弾するまえに」 (「学校の再生をめざして1 学校を問う」)  pp.161-195 (東京大学出版会 1992) . 鈴木聡 「世代サイクルと学校文化 大人と子どもの出会いのために」 pp.13-14 (日本エディタースクール出版部 2002)

 

コミュニティ・スクールの新しい視点

市民協働のまちづくりの新しい方法として、これまで教育現場では、ほとんど話題になっていないコミュニティ・スクールの可能性を確認するために、新しい視点をいくつか提示します。

 

図2 T市とN市の人口、年少・老年人口指数の推移

交通アクセスのよさや緑の豊かな両市だが、N市は2003年以降「子どもの育てやすいまちづくり」を目指した施策の成果として、20歳代から30歳代の若者・子育て世代の流入がはじまり、2015年にN市の人口はT市を上回ります。

 

 

図3 N市の人口・年少人口指数と市税(年度調定額)の関係の推移

N市は人口の増加により市税(年度調定額)が増収する期間があったが、10年ほど停滞したあと、2003年以降、年少人口指数が改善されると、再び市税(年度調定額)の増収傾向が見られます。

 

子育てがしやすい、子育てがたのしい、子どものしあわせが広がるなど、子どもをテーマにしたまちづくりを掲げる市町村は少なくありませんが、N市もそのひとつです。歴史や文化、通勤・通学のしやすさ、緑の豊かな自然環境など、住んでみたいと思わせるまちの魅力はいくつもありますが、子育て世代にとって働きながら子育てができるまちこそ、住んでみたいまちのようです。2003年に現市長に交代し、教育施策など新しい市政運営の成果が具体的な経済指標の改善として数字に表れてきています。

住みやすい、子育てがしやすいなど、そのようなまちづくりにコミュニティ・スクールが貢献しているかどうかは、それぞれの教育活動や実践を検討することが必要ですが、やり方によってはコミュニティスクール導入の成果として期待できると考えています。

開かれた学校モデルとして導入されたコミュニティ・スクールには、NPOなどと連携し教育活動をつくったり、学校支援ボランティアを活用することで学校業務の改善を目指したり、コミュニティ・スクールには様々なかたちが見られます。しかし、法定三権限の制定* など学校のガバナンスを法律を改正して学校運営協議会に移行したことを考えると、学校と地域住民が単なる学校教育の支援・被支援の関係だけに止まらず、図2と図3で示されているような経済指標の改善を目指した市民協働のまちづくりの新しい手立てとして、これまであまり話題になっていないコミュニティ・スクールの可能性を再評価したいと考えています。

* 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の平成16年改正により、コミュニティ・スクールは教育委員会が指定した学校運営協議会を設置する学校のことをいうが、法令上学校運営協議会には、(1)校長は作成した学校運営の基本的な方針を学校運営協議会の承認を得なければならない(2)学校運営協議会は、広く地域住民等の意見を反映させる観点から、教育委員会又は校長に対して、意見を述べることができる(3)地域とともにある学校づくりの観点から、すべての職員の採用その他の任用について、地域住民等が学校運営協議会を通じて直接任命権者に意見を述べることができる、これら3つの権限を、法定3権限というが、ローカルでは、教育委員会規則の学校運営協議会設置規則によって定められています。

 


図4 女性労働力率と合計特殊出生率の関係の変化

日本を含む主要25ヶ国の1970年女性労働力率と合計特殊出生率をプロットした点( )と同じ国々の2000年女性労働力率と合計特殊出生率をプロットした点( )のそれぞれ示す傾向を比較することで、女性の社会参加と出生率の新しい関係が見えてきます。

 

 

図5 日本とオランダの女性労働力率と合計特殊出生率の関係の変化を比較する

日本( )とオランダ( )の女性労働力率と合計特殊出生率の関係の変化を比較すると、コミュニティレベルでは、幼稚園から小・中学校、高校までが一貫して、男性の家事育児参加をテーマにした教育を地域とともに行うことで、近い将来、出生率改善への期待が持てることを示唆しています。

 

「開かれた学校」といっても閉鎖的な印象を拭うことが難しかったこれまでの学校ではなく、次世代型の開かれた学校では、図5で示された社会課題から子育てのしやすさや母親の働きやすさの工夫など、コミュニティが抱える身近な課題として、そのかかわり方が変ってきます。

例えば、女性の社会参加と男性の家事育児参加をテーマに幼稚園から小・中学校まで一貫したカリキュラムをつくる、子育て支援のために学校施設の稼働率を高めるなど、管理しているリソース(土地や施設など)をコミュニティが抱える社会課題の解決のためにどのように生かすかなど、運営上期待されていることがあるように思われます。

 

コミュニティ・スクールを学校評価で支援する

コミュニティ・スクールが実施する学校評価を支援する活動を行っています。P D C Aのマネジメントサイクルの後半にあたる C(評価)と A(改善)の過程で、課題を発見し、その改善方法や成果目標を共有するためのアクションプランの作成、また地域住民を対象にしたアンケートの実施など、学校や教育委員会と協力し調査研究を行っています。

住民アンケートに見る学校関係者評価の視点

つぎの資料は、人口18万人の中堅クラスの都市で実施したコミュニティ・スクールに関する調査結果の一部です。このような調査によって、コミュニティ・スクールを推進していくための課題の発見やその解決方法の手がかりを得ることができますが、このような調査は、つぎの3点についても有効なツールになります。

1.学校の教育活動のふり返りのきっかけをつくる
2.学校が行う自己評価に住民の視点から検討を加えることができる
3.学校や教育委員会と住民との相互理解を深める


図1 生徒が地域の人たちに挨拶する効果

「生徒が住民に挨拶ができているか」と「住民が学校の教育活動に協力・支援したいか」の回答結果を、つぎのようにクロスさせます。

図1から、中学生が地域の人たちに挨拶できていると回答している人たちの86%は、中学校の教育活動に協力・支援したいと考えていることが分かります。この結果からコミュニティ・スクールにとって地域との連携を強めていくために、生徒の地域帰属意識に重点を置いた指導計画の作成など、実現可能性を図りながら、何を優先するかなど、事実に基づいた具体的な検討が可能になります。


図2 住民の学校への協力・支援を引き出すための活動

「生徒と話したことがあるか」に「住民が学校に協力・支援したいか」と「ボランティア活動の経験」の回答結果をクロスさせることで、学校が住民とコミュニティの橋渡し役としての可能性が見えてきます。

図2から、ボランティア活動をしていない住民であっても、中学生と話をすることで、学校の教育活動への協力や支援を積極的に考えていることが示されています。住民の中には、子どもと関わる過程で自発的に協力しようと考える人が少なくないことが分かります。ボランティア活動の効果としてコミュニティ全体への影響を考えると、元気で活気のあるまちづくりに子どもの教員以外の大人との関係づくりが重要なことに気づかされます。


図3 コミュニティ・スクールについての住民の認知度

「コミュニティ・スクールであることを知っているか」と「学校行事や地域連携活動への参加状況」の回答結果をクロスさせることで、これまで見えなかったことが明らかになります。

図3から、学校の通学区域に住む人たちは、学校行事や学校と自治会などが連携する活動に参加している、参加していないを問わず、学校がコミュニティ・スクールに指定されていることを知らないと回答した割合が高いことが分かります。新しい課題の発見につながる調査結果になりました。

実際に、この調査を実施したコミュニティ・スクールでは、このような調査結果を生かしながら、反省やできない理由の説明に終わるのではなく、実態を反映したアクションプランの作成を模索する動きが生まれています。


図4 PDCAに「R(調査)」を導入した学校評価モデル

PDCAサイクルに、R(調査)を導入した学校評価モデルをつくり、地域住民を対象に調査を実施したコミュニティ・スクールがあります。

 

図4のように、住民アンケート(R:research)をPDCAサイクルに導入し、C(評価)からA(改善)の過程でコミュニティ・スクール事務局が熟議や教員研修会を実施することで、教職員以外の視点から地域とともにある学校としての課題や実態を把握しようと努めています。

コンサマトリー化したこれまでの学校評価からの転換

このコミュニティ・スクールの学校評価活動を支援する過程で、反省やできない理由の説明に終始し改善点が明確にならない段階から、学校の実態を反映する調査結果に基づきコミュニティ・スクールとしての課題を見つけようとするクールで積極的な姿勢が教職員が見られています。このような変化は、アクションプランの作成や地域への貢献を目指す活動づくりなど、これまでにはない成果を生み出しています。


図5 子どもたちの元気なあいさつが、コミュニティをかえる

「子どもと地域住民との心と身体の距離の近さ」と「地域住民による学校の教育活動への協力(学校支援活動)」との関係を探る手がかりが得られました。

図5は、17の自治会グループの組長・班長を対象に実施した調査結果の一部です。様々な理由があると思われますが、図中で囲まれた自治会では、子でどもがよく挨拶をしてくれることから住民に学校の教育活動に対して協力しようとする積極的な態度が強く示されていることが分かります。このような調査結果から、私たちは学校を支援する住民の自発的な活動やネットワークがつくられていく、その過程を知る手がかりが得られると考えています。子どもたちの元気なあいさつやお手伝いは、学校を核にしたコミュニティづくりのはじめの一歩になると期待できます。このようにPDCAサイクルにR(調査)を加えることで、C(評価)の過程をより充実させアクションプランの作成に役立てたり、コミュニティの一員として望まれる子ども像を具体的に示すことができます。

子どもの笑顔や挨拶、小さなお手伝いを通して、親や教員以外のおとなとの関係づくりや様々なロールモデルとなるお兄さんお姉さんからお年寄りまで、子どもにとって思いがけない出会いも期待できます。私たちは、親でも教員でもなく、子どもの多世代のおとなとの世代間関係を「タテ」でも「ヨコ」でもない「ナナメの関係」と呼んでいます。

図中の自治会A( )と自治会B( )では、子どもの学習支援や遊び場づくりを目的に自治会施設の開放がはじまりました。小・中学生の勉強や夏休みの宿題を高校生が手助けしたり、子どもやその親がお年寄りと交流したりする計画もあるようです。子どもが参加できる活動をつくることで、子どもの親や家族も一緒に参加し、多世代交流とナナメの関係づくりを目的とした中間的スペースがつくられはじめています。

 

“ スマートミックス ” という考え

私たちは、住民たちのボランタリーな活動に子どもが参加することで、子どもの家族も参加し多世代交流がはじまり、子どもとおとなの「ナナメの関係」がつくられる活動づくりをスマートミックスと呼んでいます。NPOや自治会と連携することで、このスマートミックスが見られるプロジェクトがいくつか進行しています。

またスマートミックスには、コミュニティにつくられた子どもの活動と使用する施設の規模に応じて再生可能エネルギー自給のために、分散型ネットワークをつくるなどの構想があります。小規模ですが、分散型のメリットとして、災害時に子どもを守るために、必要な電力を近隣の家庭や施設とシェアすることが可能になります。

このようにスマートミックスは、子どもの活動をつくりながらエネルギーの過剰な消費を省みたり、環境負荷を抑えたりする活動を加えたモデルが発展形としてあります。

 

“ 中間的スペース ” の発見

中間的スペースとは、まち(コミュニティ)のために何か役立つことを「ちょっとやってみようかな」と、私たちの心を動かしてくれる “ 場(スペース)” のことをいいます。

例えば、開かれた学校モデルや生涯学習構想をテーマにした勉強会や意見交換では、地域の教育力の低下や住民どうしの関係が話題になることがよくあります。実際に、自治会や社会福祉協議会のスタッフのみなさんを対象に行った聞き取り調査では、地区の役員をお願いすると断られることが多い、ひとりで何役もやっている、住民が集って交流することがむずかしくなっている、集まるということがすでにできない実態があるなど、深刻な内容も含め住民どうしの関係の変化について、詳しくお話を聞くことができます。

図5は、人口10万人以下の地方都市K市で市民意識やまちづくりへの参加状況を把握する目的で毎年実施された市民アンケートの調査結果になります。平成25年以降、自治会や市が主催する活動への市民の参加者数は、徐々に減少し、市民どうしが交流する機会があっても参加していないことが分かります。平成29年は、市のまちづくり活動に参加したいと考える住民の比率が、はじめて30%を下回っています。原因には様々なことが考えられますが、これまでのように地縁的なつながりがあっても、住民どうしの「ヨコのつながり」がつくりにくくなっている現代的な状況が背後にあるように思われます。

 


図6 K市のまちづくり活動と自治会・公民館活動への参加状況

協働のまちづくりや市政への住民参加などについて、K市で進めている総合計画に基づく施策の検証や改善のために実施されている市民アンケートの公開データを使用しました。

このような調査結果の背後に、住民どうしの「ヨコのつながり」がつくりにくくなっている現代的な状況があると考えると、そのようなコミュニティで育つ子どもたちもおとなとの関係は希薄になり、自分自身に価値がないと考えたり、自己肯定感が低くかったり、子どもの幸福感に影響を与えているかもしれません。

このようなコミュニティに見られる現代的な状況に対して、中間的スペースは、おとなたちにとっては肩書きなどには関係のない「ヨコのつながり」をつくり、子どもたちにとっては、子どもとおとなの「ナナメの関係」をつくってくれるスペースになります。これまでの聞き取り調査から、子どもの活動に一緒に向き合うことで、おとなたちから、合意が得やすい、協調した行動がとりやすいという感想が多く聞かれます。子どもとおとなたちが一緒に活動に参加することで、おとなどうしの「ヨコのつながり」が新しくつくられることが期待できます。

「ナナメの関係」づくりを目的にした中間的スペースの実践は、すでにコミュニティスクールに設置されているコミュニティ・ルームの一部に見られます。それらの名称は様々ですが、幼稚園、小・中学校、高等学校につくられているコミュニティ・ルームが市民協働のまちづくりにどのように貢献しているかを、全国から興味深い事例を探し紹介します。

 


図7 市民が考えているK市のまちづくり活動の課題

同じK市の市民アンケートの自由記述欄に記入されたテキストデータを使用し、コレスポンデンス分析* を行いこれまで見えなかったまちづくりの課題を探ってみました。

まちづくりアンケートの自由記述欄に市民が書いた文章をテキストデータ化し抽出語リストの作成後、K市以外の固有名詞を除き、つぎに置換や強制抽出語設定の作業を行い出現頻度の高い形態素** の一覧を作成し、コレスポンデンス分析の結果、形態素を2次元平面にプロットすることで、図7を作成しました。

成分1と成分2に分かりやすい解釈を加え、平面上に4つの象限をつくることで、4つの語群がそれぞれ3から10の形態素によって構成されていることが分かります。同時に行ったクラスター分析から得たクラスター1からクラスター5とこれら4つの語群との対応については、つぎの表1にまとめてあります。

 * テキストデータの分析には、KH Coder 3 を使用しています。
** 形態素(morpheme)とは、意味を持つもっとも小さな言語の単位をいいます。

 

表1 市民の声から得られた施策上の気づきや事業化の視点

テキストデータの制約から抽出した形態素は多くはありませんが、このような分析方法の導入により、K市のまちづくり施策の課題や事業化の視点などが得られることもあります。

クラスター分析によるデンドログラムなど、公開していない資料はありますが、このようなテキストデータの分析を導入することで得られる新しい施策上の気づきや事業化の視点を参考に、次世代型の学校モデルを作成しています。そのような学校モデルには、多世代交流による「ナナメの関係」づくりや学社融合の実践などを手がかりにして考えられた「新しさ」があります。